「虐殺器官」レビュー。ハードとライトが混ざり合った良作。

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)

うーん、面白い

今更ながら、伊藤計劃さんの「虐殺器官」を読了。作者が亡くなってるということは知っていたので、続刊とかもないか、後回しにしようとということでここまで読むのが遅くなってしまった。

一言で言うと、ハード目な内容なのにとても読みやすくて面白い。海外風ハードSFの雰囲気がありつつ、日本のライトノベル的な雰囲気も混ざり合ったハイブリットなSF小説だと思いました。

情景描写はゲーム的

読みやすさの一因としては、情景描写がとても分かりやすいこと。読んでいて思ったのはなんだかゲームのプレイ画面が浮かぶなあという感じ。特に戦場への投入ポッドまわりの描写に手がかけられているシーンなんかは、ゲームのイントロダクションにも通じる所があって特にそれを感じました。あとがき読んで分かったけど、メタルギアシリーズの愛好者だったんですね。

未来武器とかの描写は薄め

主人公はスネークよろしくスニーキングが基本スタイルなので、装備関係は肉体調整系(痛覚遮断とか感情調整とか)やスニーキング補助(光学迷彩)がほとんど。未来兵器を活用して~みたいなところはほとんどなし。意外だったのはネット系の兵器がほとんど出てこないところ。最近のSFにしては珍しい気がする。変に「銃弾が~で」みたいなマニアックな描写がないのは良点。

しっかりとメインテーマを描ききる

母の死という主人公が抱えている問題が、彼の暗殺という仕事を軸に絡めながら無駄なく全篇通して描ききれている所が秀逸。軸を通しつつ、無駄な部分を感じることがない所というのは、もちろん伊藤さんの力もあると思うけど、日本人が描いたからというところもあると思う(海外SFだと、どうも価値観や生活様式が違うのか何故この描写に拘るのかみたいなことがちらほらある)。

ごつめのテーマを描きつつ、ここまで読みやすいというのは、他人にオススメしやすいという意味でも大きな価値がある。SFってかなり細分化されてて、なかなか両手を挙げて誰にでも「オススメできます!」みたいな本ってあまりないけど、これはそれができる珍しいタイプ。もちろん万人向けの軽薄なもの、という意味ではなく中身がしっかり詰まってるという意味。

アニメ化は…けっこういいんじゃないだろうか

アニメ化公式サイト(http://project-itoh.com/)を見ると、動画少しだけ公開されてました。ハードな感じを表現できてていい感じ。制作はマングローブ…原作付きなら大丈夫だよね!虐殺器官についてはTVシリーズより絶対映画の方が良い感じ。スピード感があるのでダラダラぶつ切りにしないでがつんと映画で見たい。CVは櫻井さん?なのかな。

というわけで、次はハーモニー。いやー、こんなに読むのが楽しみな作家さんは久しぶりだ!

 

===今日の寝かしつけソング===

空の終点:手嶌葵


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