SF

F.S.S Designs 5 リッターピクトが届いたのでレビュー

F.S.S. DESIGNS 5 LITTER.pict

リッターピクト届いてた

ファイブスターストーリーズ、設定資料集「リッターピクト」が届いていたのでレビュー。ここのところ漫画にデザインズにけっこう頻繁に発売されてるのでテンション上がるなあ。

またサイズが違うじゃないか

デザインズも5冊目。4巻は怒涛の大きさでびっくりでしたが、今回の5巻は小さい。せめて1~3と同じ感じにしてくれたらなあ。装丁もこれまでのものと比べるとショボい…。

表紙はスタイリッシュなんだけど、中身のデザインもなんかちょっと微妙。全体的に統一感がないし、1~3にあったような配置の美しさもない。これならdesignsという名前でなくてもいいような。

中身はコアな話と騎士団図鑑(と女子高生)

肝心の中身、いきなりナインの話やら超帝国やらでコアな設定についての解説。そして各国騎士団の礼装や戦闘服、普段着など。最後に各国高校制服図鑑となってます。

全体的に戦闘兵器については少なめ。メカ好きで読んでる側としてはちょっと物足りない感じもあるけど、破裂の人形やHL1載ってたりとテンション上がる部分は有り。しかしバングをこうして比べてみると、旧バングはスタンダードに綺麗なロボットって感じ。新バングは、なんというか評価が難しい。ヒーロー感は減ったんだけど、妙なリアリティを感じる。

あとは女子高生制服図鑑。全体的に微妙な感じの今作だったけど、ニオたんやヘアードさんの女子高生姿が見られたから満足だ…。

連載も再開!パルスエット編楽しみ

また前編これから始まるシリーズの解説が多数あり。連載も再開したし、こりゃ楽しみだわ。

?の連続。「絞首台の黙示録」レビュー。

絞首台の黙示録

神林長平先生の昨年10月発売小説を読了。以下ネタバレ有り。

序盤は重いが、ズレが出てくるところから面白い

読み始めていきなり始まるのが死刑執行までのシーン。インパクトのある始まりだけど、そこからしばらく長かった。離婚を経験した独り身の男が、行方が分からない父のために帰郷する。おそらく自分が10~20代前半くらいだったらここで挫折してしまいそう。

面白くなってくるのは、登場人物たちの間に「ズレ」が生じ始めるところ。設定的なズレは最初からあるが、登場人物たちの間に生じ始める認識のズレが出てくるあたりからぐっと面白くなってくる。

未来ガジェット的な要素はほとんどない。

一方で、戦闘機や機械生命、宇宙船や人外のキャラクターなどのSF要素はゼロ。何かを爆破したり、殺したりといったことも全然ない(死刑執行はあるけど)。

代わりに大きなテーマとして扱われているのが科学と宗教。全編にわたって、科学的価値観と宗教的(キリスト教的)価値観との違いが描かれてます。その中で面白かったのは、主人公の一人「タクミ」が言った、宗教的な価値観はどんな出来事や物も宗教的なものへと捻じ曲げて解釈する。それはすなわち相手を理解しないと宣言することと同じである。というような言葉。

あぁ、自分が感じていた宗教への違和感というのはこういうところにあったのかもしれないと思い至る。他者とのコミュニケーションにおいては、必ず自分と他者との間にエンコーディングやデコーディングが働くものだと思う。そしてそこで生じる大きな齟齬がコミュニケーションに問題を引き起こすが、宗教的なそれは特に露骨な形で「見えてしまう」のだと思う。

最後までしっとり。

物語は後半、ぐっと解説が始まるところから加速するが、それでも全体的にはしっとりとした雰囲気。全編ゆったりとした気持ちで読み終わることができるというのも、珍しい。

というわけで、メカとか出てこないけどかなり読み応えがある感じ。最近の著作の中では一番面白いかな。

ただちょっと気になるのが、おじいちゃんすごい死んじゃいそうなところ。そこで寝ちゃダメー!あと表紙。西島大介さんの絵だけど、これは一体…。ちょっとファンタジー過ぎるような。

「全滅領域」他「サザーン・リーチシリーズ」読了。レビュー。

全滅領域 (サザーン・リーチ1)

これは久しぶりにがっつり面白いSFだわ

サザーン・リーチシリーズ3部作を読了。~部作みたいなタイプは久しぶりに読んだのですごい満足感。

しかしこのシリーズ。かなり面白い。一応SFで言うところの隔絶空間モノ(最近だとアンダー・ザ・ドームとか、ラーゼフォンの東京ジュピター的な)なんだけど、ミステリー要素を多分に含んだタイプの小説。一方ハイテクガジェットはほとんど出てこない。

個人的には何かしらの未来ガジェットがあってこそのSFだ!と思っていたけど、いやはやこういうタイプでもしっかり面白いのはあるんだなあ。

簡単なあらすじ

シリーズを通して語られるのは、突然出現した「エリアX」と呼ばれる謎領域。そこに派遣される調査隊メンバーの話が1巻「全滅領域」。一方調査隊を派遣する組織側を描いたのが2巻「監視機構」、そしてそれらをとりまとめた終局を描くのが3巻「世界受容」。という構成。

話の軸になるのは、この「エリアX」。これはある地域をすっぽりと覆ってしまった空間で、侵入するには1箇所だけ発見されたゲートを越えなければならず、しかもこれまで生還した人はいないらしい。なにそれ行きたくない。ちなみに内部にはデジタル機器は持ち込み不可。領域外との通信もできない。

女性研究者で構成された調査隊メンバーはこの全滅領域に派遣され、それぞれの専門について調査を行っていく予定だった。しかし明らかに怪しい地下に通じる穴を見つけてしまう。さてどうしようというのが冒頭の感じ。

主人公は巻ごとに変わる。ちなみに1巻の主人公「生物学者」は一切デレないツン。イメージ的には甲斐田裕子ボイスと言えば分かっていただけるだろうか。2巻の主人公は森川智之さん希望。我らが病める科学者ホイットビーはチョーさん推し。

伏線の回収が快感

ミステリー寄りのSFということで、至る所に伏線が。実際に回収されていくのは2巻以降となるが、このスピードとテンポがとても良い。読んでてどんどん回収されていく伏線。読みながらピコーン!ピコーン!と謎が解けていくのはとても快感。

なので2周目読んでも色んな発見あるんだろうなという感じ。また映像化(既に映画化が決まっているらしい)されたものを見ても新しい発見がありそう。ただボリューム的には映画化よりもシリーズドラマにして欲しいかな。

邦訳の描写はキレイだけど、ちらほら謎単語

またエリアX内は豊富な自然に覆われた世界になっているけれど、この描写がとてもキレイ。主人公の1人が生物学者ということもあるけど、風景やそこに生きる動物などの描写がとても細やか。邦訳もSFにありがちなガチガチタイプではなく、読みやすくなめらかな文体。

ただ時々検索しても出ない単語が登場。まあなんとなく想像はつくけど、ちょっと気になってテンポが損なわれてしまう。手に取る機会があったら原著版で確認してみよう。

かなりオススメSF

というわけで、サザーン・リーチシリーズはかなりオススメSF。映画化含めてこれからどんどん盛り上がっていきそうなんで、隔絶空間モノに興味のある方はもちろん、SFはしんどいと思ってるミステリーファンにもオススメです。

昨日のからだ
カロリー差引 -kcal
体重 56.5kg (前日差:+0.5kg)
体脂肪率 11.7 % (前日差:+0.3%)
今日のワークアウト ストレッチ
メモ カロリー収支わすれた

「エンダーのゲーム」読了。長い。ひたすら長い。

エンダーのゲーム (ハヤカワ文庫 SF (746))

前々から気になっていた、オーソン・スコット・カードの『エンダーのゲーム』を読了。以下ネタバレ多少あり。

長い。とにかく長い

読み終わって訪れた感想、それは「長い小説だ…」の一言。ひたすら主人公の「ゲーム」を巡る日常を描いているけど、それがもう長いのなんの。半分くらい読んで挫折しそうになるくらい。

主人公も少年・青年&ハイスペックだからか、その心情を読み解いていくにしてもなかなか共感しにくい。結末に明らかにされる「ゲーム」のネタにしても、カタルシスが少ない。なんだかスッと終わってしまった。このあたりは同じネタの作品たち(むしろ「エンダーのゲーム」が元ネタなんだろうけど)を先に見聞きしてる部分もあるやもしれない。

あとはハイスクール的なノリがよく分からないところ。寄宿舎みたいなところって海外では一般的なんだろうか。同じ世代で暮らすっていうシチュエーションがイメージしにくい。

むしろ兄妹たちの話が面白い。それか最終章。

エンダーがずっと宇宙であれやこれややってる間、地球の兄妹たちは独自に活動。どちらかというと、このネットワークを駆使しながら世界に関与していく二人の方が面白い。

あるいはゲームが終わった後の世界。ただ終了間際から読んでてテンション上がってくるも、そのままスルッとおしまい。なんだろう、この消化不良感。

のんびりでなく、一気に読んでしまうのをオススメ

というわけでなかなか盛り上がりも少なかったりと、集中して読みにくい小説だったので、一気に読んでしまうのがオススメ。だらだら小刻みに読んでると挫折の可能性大。

 

「ゼンデギ」は今の時代にぴったりの父子SF

ゼンデギ (ハヤカワ文庫SF)

グレッグ・イーガンの「ゼンデギ」を読了したのでレビュー。以下ネタバレあり。

序盤はちょっとしんどい。2章からスピードアップ。

イーガンの新作だ!と喜びながら読み始めてみるも、イランの民主化運動の話がひたすら続いてちょっとしんどくなってくる。著者の感心の高さがあるんだろうけども、あまり自分にとっては興味が薄い部分なので読み進めるスピードも遅くなり、重い重い。

一方で時代が変わり、父になったマーティンとゼンデギに関わり始めたナシムの話が始まると一気にスピードアップ。ここからは一気に読み進めることができました。

もちろん前半部分が無駄だということではなく、仮想人格が生まれてくるまでの考察や、異国人であるマーティンが暮らすイランという場所を思い描くためには必要不可欠。なので序盤がしんどい…と思った方も読み進めてみるが吉。

メインになる技術は「仮想人格」

今作のエッセンスになるのは、バーチャル空間に構成できる「仮想人格」。同じイーガンだと「順列都市」、国内だと神林長平の「帝王の殻」(こちらもまさに仮想人格を巡る父と子の話)が思い浮かぶ。

ただ技術的には実現されていない設定で、順列都市であったように完全アップロードは遠い夢という技術。年初にNHKの特集でも同様の話題を見たけど、今後リアルでもひとつのトピックになる話題なんだろうなあ。

親の記憶を残すということ

さて主人公のひとり、マーティンは妻を事故で失い、本人もガンによる余命を宣告され、残される幼い息子のために自分の仮想人格を残せないかと考えます。

まず考えてしまうのは、自分ならどうするだろうか?という問題。自分も父という役割を生きている以上、リアリティのあるテーマです。結論としては、やはり本作のように不完全なものを残してしまうのは避けるべきだろうということでした。

親が子に「価値観や人生観をどう伝えるべきか?」という問題について、現在のやり方としては手紙やビデオレターなどのただリピートするだけのメディアや、あるいは自分が感銘を受けた本や映画、音楽などの解釈の余地があるメディアを残すという方法があるかと思います。

一方で仮想人格はそれらとは完全に異質で、極めて直接的な方法で自身の価値観を伝えてしまう。コミュニケーションの可能性がある点で手紙とは異なるし、本などのように解釈の余地も大幅に削られてしまいます。

作中でも人格の再現性が大きな課題となっていたけれど、不完全なエラーを起こしうるものを幼い子どもに寄り添わせるのはとても怖いなと感じました。

じゃあ完全コピーならいいのか?という話になりますが、これについてももう少し考える必要がありそう。身体を持たない仮想人格がどう成長するのかといった身体性の問題や、子どもとのコミュニケーションの記憶をどう蓄積していくのかといった成長に関する問題があるように思えます。

同じ問題について、妻にも質問してみると「子どもが新しい家族を作れなくなりそう」とのこと。なるほど、その発想はなかった。バーチャル親と決別する時が来ず、それに依存してしまう可能性も確かにある。

精緻な描写と考察が光る良い作品

というわけで、ゼンデギは色々考えさせられるいい作品。またイーガンのこれまでの作品にも通じるように、専門的な知識を緻密に描くスタイルや、こうした社会的な動きがあるのではないかという考察が随所に書き込まれてます。

おそらくこれからこのテーマは色々議論されていくのでしょうが、その時のためのトレーニングとして読んでも面白いかもしれません。

 

===今日の寝かしつけソング===

あなたを保つもの:坂本真綾