「小指の先の天使」読了。しっかり1冊仮想空間もの。

小指の先の天使 (ハヤカワ文庫JA)

未読だった、神林長平さんの「小指の先の天使」を読了。以下若干ネタバレあり。

テーマは仮想空間とリアルもの。

前知識無しで読み始め、1章まで読み終わったところでこれは微妙かもしれない…と思い至る。が、2章を読み始めると仮想空間・リアルものではないか。しかも年月経ちすぎて過去の技術がどんどん廃れていってしまう系。これらは大好物なので全編かなり楽しめました。

魂の形はシステムによってどう変化するか?

話の舞台としては典型的な仮想空間ですが、他と違うのは仮想空間内で進化(変化)していく人々やシステムにフォーカスが当てられているところ。SFの醍醐味って、こういう新しい技術があったとしたら人はどう変化するのかをイメージするところにあると思うので、まさにこの小説はSFだ!という感じ。

ふと思い出したのは、ゼーガペインで出てきた仮想空間。あっちはシステム的な制限によって同じ時間を何度もループさせなければならない世界だったけど、こっちはどんどん代替わりをしていく世界(容量的な限界はある)。そういう仮想空間のシステム的な差って生み出すものが全然違ってくるなということに思い至る。

魂の形は変わる。哲学や宗教はアップデートされる?

医療や社会構造の変化によって、例えば300年前の人たちと今の人たちは生に対する価値観は異なる。対処できない病気が多かったり、食料問題などが切迫している状況を仮定すると、人生についての考え方は当然変わってくるだろう。哲学や宗教はそうした時々において、人々の悩みを解決するために基本的には存在している。

ただ仮想人格がネット上ないしはデジタルな空間に保存できるとなると、これまで以上に変化の波にさらされてしまうのではなかろうか。特に宗教なんかで無限に生きられる=神みたいな定義をしている場合はどう対処するのだろう。まあ肉体の死こそが人の死であるみたいな定義をするのかもしれないけど、それはあくまで当人的な問題なのであって、生きている人たちにとってそうとは限らない。そうした齟齬をこれからどう処理していくのかな、というのはちょっと興味がある。

フムンがなかった

個人的に好きな「フムン」がなかった。残念。あと「神使機」というメカのネーミングが例によって少しダサい。ネコ出てくる章はすごい良かった。

 

===今日の寝かしつけソング===

涙の種、笑顔の花:中川翔子


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