読書

仮想空間(サイバースペース・メタバース)系SFのベスト5

スノウ・クラッシュ〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)

というわけで、私の好きなSFジャンル「仮想空間」系についての覚書。

ひとまず仮想空間の定義は、ざっくりと「現実と併存するネットワーク上に構成される世界」とします。サイバースペースとか、メタバースとか色々言葉があるけど今回は特に定義を分けない。またMOとMMOの違いみたいに多人数でログインできる・できないとかはひとまず無視。

第5位:ニューロマンサー

仮想空間系SFの先駆けで、”Cyber Space”という言葉を作った小説。といっても1984年に出版とそんなに古い小説でもない。翻訳が秀逸で、「没入(ジャック・イン)」とか「離脱(ジャック・アウト)」とか訳しちゃうセンスがすごい。また一番最初に今でも通用する仮想空間に関するたくさんの設定を詰め込んだのがすごい。

仮想空間系でとりあえず一度は読んどけ的な感じだけど(もちろん面白いけど)、ちょっと硬めな文体・テーマなので最初にオススメはしない。

第4位:クラインの壺

和製仮想空間小説。ネットワーク系ではなくて、個人で接続する体感型の没入システムの話。若干ホラーなSF小説。ちなみにNHKでドラマ化されており、小さい頃に見て若干トラウマ。

似たテーマには「クリス・クロス―混沌の魔王 (電撃文庫 (0152))」というこちらも日本人の書いた仮想空間系SF有り。こちらは15年前に書かれたソードアート・オンライン、みたいな感じの剣と魔法モノ。こういう世界っていつになったら実現するんだろう、と当時思ってたけど、オキュラスとか見てるとわりと早く実現しそうな予感。

第3位:順列都市

グレッグ・イーガンさんの書いた仮想空間モノ。仮想空間内に作られた仮想人格のお話。タイトルがかっこいい。上下巻構成でがっつり読み応えもあり。

かなり詳細な設定や、テーマに対する考証が書き込まれているので腰を据えてじっくり読むことが必要。面白いけど、若干SF予備知識が必要なところもあるのでいきなりここからスタートというのはちょっと大変かも。

第2位:小指の先の天使

他と比べて仮想空間色はかなりライト。ただ仮想空間と現実空間の2つを長いスパンで描いている所が他と違って面白い。ちなみにこの本の仮想空間は、外部から完全に没入するタイプ。分かりにくい例えをすると、Falloutのトランキルレーンみたいな感じ。

作者の神林長平さんは仮想空間内のアバターを扱った「だれの息子でもない」とかも面白い。勿論仮想空間ではないけど戦闘妖精・雪風(改)も。

第1位:スノウ・クラッシュ

個人的ナンバーワンはこれ。ニール・スチーブンスンさんのスノウ・クラッシュ。上下巻構成。表紙はアニオタにはおなじみの鶴巻和哉さん。下巻の表紙を飾るY.Tがかわいい。

とにかくこれでもかと色んな設定が詰め込まれ、主人公たちのスピード感が描かれてて全篇飽きない。どことなく洋ゲーの雰囲気が漂ってて、そういう下地があるとシーンを想像しながら読み進めていけると思う。ちなみに日本ではあまり評価が高くないらしい。何故だ。

ニール・スチーブンスンさんは「ダイヤモンド・エイジ (海外SFノヴェルズ)」もオススメ。インタラクティブな電子書籍を巡って世界が大騒動、という話(あまりにもざっくりしている)。

 

というわけで以上5冊+α。これからこのジャンル読みたいみたいな人の参考になれば。

 

===今日の寝かしつけソング===

I do:Ilaria Graziano

「小指の先の天使」読了。しっかり1冊仮想空間もの。

小指の先の天使 (ハヤカワ文庫JA)

未読だった、神林長平さんの「小指の先の天使」を読了。以下若干ネタバレあり。

テーマは仮想空間とリアルもの。

前知識無しで読み始め、1章まで読み終わったところでこれは微妙かもしれない…と思い至る。が、2章を読み始めると仮想空間・リアルものではないか。しかも年月経ちすぎて過去の技術がどんどん廃れていってしまう系。これらは大好物なので全編かなり楽しめました。

魂の形はシステムによってどう変化するか?

話の舞台としては典型的な仮想空間ですが、他と違うのは仮想空間内で進化(変化)していく人々やシステムにフォーカスが当てられているところ。SFの醍醐味って、こういう新しい技術があったとしたら人はどう変化するのかをイメージするところにあると思うので、まさにこの小説はSFだ!という感じ。

ふと思い出したのは、ゼーガペインで出てきた仮想空間。あっちはシステム的な制限によって同じ時間を何度もループさせなければならない世界だったけど、こっちはどんどん代替わりをしていく世界(容量的な限界はある)。そういう仮想空間のシステム的な差って生み出すものが全然違ってくるなということに思い至る。

魂の形は変わる。哲学や宗教はアップデートされる?

医療や社会構造の変化によって、例えば300年前の人たちと今の人たちは生に対する価値観は異なる。対処できない病気が多かったり、食料問題などが切迫している状況を仮定すると、人生についての考え方は当然変わってくるだろう。哲学や宗教はそうした時々において、人々の悩みを解決するために基本的には存在している。

ただ仮想人格がネット上ないしはデジタルな空間に保存できるとなると、これまで以上に変化の波にさらされてしまうのではなかろうか。特に宗教なんかで無限に生きられる=神みたいな定義をしている場合はどう対処するのだろう。まあ肉体の死こそが人の死であるみたいな定義をするのかもしれないけど、それはあくまで当人的な問題なのであって、生きている人たちにとってそうとは限らない。そうした齟齬をこれからどう処理していくのかな、というのはちょっと興味がある。

フムンがなかった

個人的に好きな「フムン」がなかった。残念。あと「神使機」というメカのネーミングが例によって少しダサい。ネコ出てくる章はすごい良かった。

 

===今日の寝かしつけソング===

涙の種、笑顔の花:中川翔子