仮想空間モノに危機感をもたせるための方法

ソードアート・オンライン (16) アリシゼーション・エクスプローディング (電撃文庫)

最近アニメ見てると、オンラインゲームが舞台になってるのがとっても多い。大ヒットのソードアートオンラインをはじめ、ログ・ホライズンやらかなり色々目にします。

オンラインゲームとそれを舞台にしたコンテンツ

30代前半の自分としては、こうしたオンラインゲーム物と言って最初に思い出すのは「クリス・クロス―混沌の魔王 (電撃文庫 (0152))」。94年にリリースされたゲームの仮想空間が舞台のラノベ(当時はこんな言葉なかったけど)。あとは「クラインの壷 (講談社文庫)」。こちらはさらに古くて89年にリリースされた小説。こちらもテスト中のゲームを舞台にした仮想空間がテーマ。

振り返ってみると、90年代というのはインターネットは普通のおうちにほとんどなくて、オンラインゲームなんてのは中高生がプレイするなんてのはとても難しい時代でした(パソコンは高いわ、通信料も高いわ、パソコンを操る知識も必要だわとすごい大変だった)。

MMOタイプのオンラインゲームの草分けになったのは、「ウルティマ・オンライン(97年)」というゲームですが、広く、特に日本で一般的にプレイ人口が増えたのは「ラグナロク・オンライン(2002年)」と「ファイナルファンタジー11(2002年)」が出てからあたりになると思います。

一方でオンラインゲーム(仮想空間)を題材にしたコンテンツは最初に挙げたようにそれよりも古く、上に挙げていないハードSF小説なんかも含めると、10年以上前からそうしたテーマは想像されてきたわけです。

危機感をどう演出するか?

一方でオンラインゲーム(仮想空間)をテーマにすると、どうしてもネックになってしまうのが「所詮はゲームだろ問題」。どんなに話が大きくなっても、結局は仮想空間の中だけの話でリアルには何の問題もない。つまり危機感が全く生まれない

いっそ完全に異世界の話にしてしまえば大丈夫な問題も、「仮想空間」という特殊な場所をテーマにしてしまうために「仮想vsリアル」という問題も触れないといけなくなってしまうわけです。

というわけでそれぞれ色んな危機感を煽る工夫がなされているわけですが、ちょっと気になったのでまとめてみました。

仮想空間内の死がリアル死系

仮想空間が何らかのトラブル、あるいは仕様によって、仮想空間内で死亡するとリアルの自分も死亡してしまうパターン。ソードアート・オンラインとか。

仮想空間で生きる世界系

こちらは仮想空間での生活が主体になっているタイプ。リアルの身体はもう消失してるとかの設定で、仮想空間内で人がどう生きるかみたいなのがテーマ。現実とクロスオーバーするタイプも多い。「マトリックス」とか「順列都市〔上〕」とか。

仮想とリアルの境界が曖昧になる系

上の亜種。仮想空間内のリアリティが高すぎて自分がどこにいるのか分からなくなってしまうタイプ。仮想とリアルの価値の違いや、人間の感覚器の意味や経験の価値なども併せて語られる。上に挙げたクリス・クロスとかクラインの壺とか。

仮想空間が現実に影響を及ぼす系

仮想空間が現実に対して強い影響を及ぼすので大変だ、というタイプ。仮想空間発の犯罪などがテーマ。仮想空間がコミュニケーション手段として広く一般化していることがおおむね前提になっている。「スノウ・クラッシュ」とか「.hack」の後半とか。

うーん、無理やり分けてみたけどそれぞれかぶってる部分が多い。なかなかズバッと分けるのは難しいですね。例えばゼーガペインとかは色々混ざってる。まあだいたいこんな感じということで良しとしよう。

仮想の価値と現実の価値

というわけで危機感を煽るための設定はこれまで挙げたような感じです。それぞれ色んな方法で、これは「仮想空間」なんだけどとても大変な問題なんだということを主張しているわけです。

仮想空間が生み出す価値っていうのは、やはり軽んじられやすい。リアルこそが至高。なぜなら情報量もたっぷりあるし、全身の感覚をフルに味わえる。仮想なんて所詮モニター上の絵空事だという話になる。やっぱりネトゲはもちろん、ネットを介したコミュニケーションが日常ではない人(メールだけとか)にとってはそう思うのも当然なのかもしれません。

でもネトゲで仲間と一緒に戦った記憶ってすごい価値があるよね。すごい綿密に戦略練って、準備して挑んだ闇の王は強かった。国内MMO黎明期を体験してきた世代にとって、仮想の価値は現実と等価というのはとても重要なテーマだと思います。

一方でソードアート・オンラインのアニメを見てて面白いのが、そういったテーマをはなから議論してないところです。「仮想空間で育まれた関係」や「仮想空間での経験」にも価値があるんだ!という主張をほとんど感じない。もうそんなことをわざわざ論じなくても今の読者層にとっては自明のことなのかもしれません。

今は仮想空間コンテンツがブームのようだけど、これは今後どうなるんでしょう。こうして振り返って考えてみると、これから情報化の進展で、そこで語られるテーマがどう変わっていくのかというのが楽しみです。

 

===今日の寝かしつけソング===

夢の卵::橋本一子/橋本まゆみ


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